アルベロベッロのとんがり屋根

イタリア共和国プッリャ州バーリ県にある小さな街、アルベロベッロ。ここには「トゥルッリ」と呼ばれる伝統的な家屋があります。白壁にとんがり帽子のような屋根がついていて、お伽話にでてくる家のよう。アルベロベッロには、こんなトゥルッリの密集する地区が2つあり、あわせて約1500以上のとんがり屋根があるといいます。

アルベロベッロは人口1万人の小さな町。ローマなどの大都市からのアクセスが良いとは言えませんが、世界各地から観光客が訪れています。むかしこの一帯の住居の多くはトゥルッリだったそうですが、現在はおよそ建物の4分の1だけがこの様式です。アルベロベッロのトゥルッリ保存区(世界文化遺産登録)は東の「アイア・ピッコラ地区」と西の「リオーネ・モンテ地区」の2つに分けられます。規模が大きいのは前者で、1000棟以上あるのだとか。

トゥルッロ(トゥルッリの単数形)の中は、決して広くはありません。小さな家だと、部屋の仕切りもないし、風通しもよくありません。真夏の暑い日、さぞや快適とは程遠い生活をしているのだろうと思って中へ入ってみました。ところが、トゥルッロの中はさほど暑くありませんでした。話を聞けば、壁が二重になっていて、断熱効果があるそうです。円錐部分を利用した屋根裏部屋や、雨水を利用した床下の井戸もあるんだとか。小さいながらも、よく考えられた住居に驚きます。

現在、トゥルッリは住居としても使われていますが、観光客向けに土産店やレストラン、ホテルに改装したところが増えています。こうした店を訪ねれば、気軽にトゥルッリの内部を見学することができます。展望テラスのある店もあって、とんがり屋根が並ぶ景色を見ることができます

この特徴的な屋根ですが、セメントなどは一切使われていません。ただ平べったい石灰岩を積み重ねただけだそうです。崩れてしまいそうな気もしますが、実はトゥルッリは解体しやすいように作られたという説もあります。その目的は課税対策。むかし、領主は家の数だけナポリ王国に税を納めなければならなかったといいます。そこで、徴税人が来ると分かれば、すぐに屋根を壊して、家ではないと主張しのだとか。

観光の拠点、バーリの街

アルベロベッロへ行くために立ち寄った街、バーリ(Bari)。港町として栄えており、旧市街の雰囲気も素敵でした。

泊まった宿は家族経営の小さなホステル。ごく一般的なアパートそのままで、一室からご家族の話声も聞こえてきました。WiFiの調子が悪くなったら、エンジニア風のお兄さんが出てきて設定してくれたり、困りごとがあったら「マンマぁー」とお母さんを呼んできてくれたりして、とてもアットホーム。

アクセス

アルベロベッロへ行くには、まずプッリャ州の州都であるバーリへ行きます。バーリ中央駅から私鉄の「Sud Est(スド・エスト鉄道)」がほぼ1時間に1本ほど出ていて、1時間ほど乗車すると車窓に点在するトゥルッロが見えてきます。ここまで来れば、アルベロベッロはすぐそこ。

アルベロベッロ駅は小さな駅舎ですが、駅員が常駐しています。駅前の道をまっすぐ進めば、市の中心部に着きます。

旅のMEMO

バーリからは鉄道でアクセス良好。近くの洞窟住居・マテーラと合わせて観光がおすすめ。