環境問題は世界共通の課題のひとつで、各国がクリーンエネルギーへの転換や脱プラスチックなどの政策を進めている。ゴミを焼却する時に発生する有害物質も厄介だが、日本では高温で焼却した後にフィルターを通すことで、大気が汚染しないようになっている。ここフィリピンでもゴミ処理に起因する環境への悪影響が問題となっていた。しかし、高性能な焼却施設を導入するのには莫大な金がかかる。そこで政府が出した結論は…
「ゴミを一箇所に集めて埋め立てればいい。」
そうしてマニラ北部にゴミ山が誕生した。炎天下の中、ゴミが自然発火し、常に煙がくすぶるようになった。そんな様子から「スモーキーマウンテン」と名付けられた。もともとこのエリアは漁村だったが、ゴミ山から水で汚染された海で魚が穫れなくなり、漁師たちはこの山に移り住み、スカベンジャーにならざるを得なかった。2000年になるまでにその光景に全世界が注目してメディアが報じるようになると、政府はそれを隠そうとスモーキーマウンテンを閉鎖した。現在は海沿いの別の場所に第二のスモーキーマウンテンがある。2024年の現在の旧スモーキーマウンテンはどんな様子か案内してもらった。
いまもスモーキーマウンテンでは自然分解されることのないプラスチックが土の表面から見え隠れして、あちこちに煙が見える。そんな中進んで山を登ると廃材を組んだだけの小屋でできた集落が見えてくる。現在、スモーキーマウンテンは許可制で住むことができるらしい。
インフラは一応ある。山の頂上には民営のパーティー用の貸しプールがあり、オーナーが水と電気を有料で供給してくれるらしい。とはいえ、経済的な理由で電気を使える家は多くはない。
男性の仕事はおもにスカベンジャー。金になりそうなゴミを集めてきて、分別して売る。金属は金になるので、生活に困らないくらいには稼げるらしい(とはいっても、21世紀の「文化的」な生活ができるわけではない)。
女性や子どもは内職的な仕事が多いらしい。うずらの卵を入れるパックは1000個作って200ペソ。1日に500個作れるそうなので、100ペソ(約260円)の稼ぎだ。国民的ファストフードのジョリビーのフライドチキン+ライスのセットと同じくらい。
それにしてもスモーキーマウンテンの人たちは太陽のように明るい。同じマニラでも、ショッピングセンターのブランド店で働いている人の何人かと話すと、ストレスで辛いと言いながら暗い顔をしていた。
幸せって何だろう。最後に話を聞いた女性は「謙虚であること」と答えた。