死者を崖に吊るす村

バタッド村を後にして、まずはジプニーでバナウェへ向かう。運賃は確か150ペソで朝9時発の1日1便しかない。

乗り合いバンでボントク(Bontoc)へ向かう。200ペソ、1時間ほどの道のり。ボントクはこの地域では大きな町で、銀行や商店も充実している。軽く昼食を食べて、また乗り合いのバンでサガダ(Sagada)という村を目指す。乗り場が少しわかりにくい。

サガダに到着したら、まずはツーリストオフィスへ行き、環境税を支払う。サガダはサステナブル・ツーリズムに力を入れており、外の資本をほとんどいれず、住民たちが主体となって観光客を受け入れている。ガイドのコースはどこに頼んでも一律で安心感がある。

サガダはコーヒーの産地としても有名だが、死者を崖に吊るす風習があるというので観光客が訪れる。ハンギング・コフィン(hanging coffins)と呼ばれるそれは、エコーバレー(echo valley)にある。人が亡くなった時、ミイラ状態にした後、棺に入れて崖に吊るすという。

理由は諸説あるが、近くにいる首狩族から守るためだとか、天国・祖先の霊に近づくためだとか、定かではない。また、崖に吊るす代わりに洞窟の中に埋葬する者もある。洞窟は母体の象徴だとか。

いずれの場合も共通している特徴がある。それは、棺の長さが1mくらいしかないこと。遺体を胎児と同じ格好で棺の中にいれるのだ。この地域では、この世を去る時には、生まれた時と同じようにするべきだという考えがあるらしい。そうすることで、また生まれ変わってこの世に戻ってくるというふうに考えられているのだとか。なるほど、だから胎内を連想する洞窟の中に埋葬するのか。

この風習は2000年前からあるというが、2000年代に入ってからはほとんど廃れてしまった。現在ではキリスト教式の埋葬が一般的になっているという。

サガダにはもっと長く滞在したかったが、現金がなく、日本のカードに対応したATMもなかったためやむを得ずルソン島第2の都市であるバギオへ向かう。Coda Linesというバス会社で、車内で支払う。300ペソくらいだった気がする。1日に4便ほどあるらしい。途中2回の休憩を挟みながら、細い山道を6時間ほど進む。アクセスは悪いが、また来たい。

旅のMEMO

基本的に現金かGcashしか使えない。両替や日本のクレジットカードで現金を引き出せるのはマニラかバギオなどの大都市などにある大手銀行のATMだけ。十分な現金を持って山へ行こう。